2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19650255
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉田 邦夫 The University of Tokyo, 総合研究博物館, 准教授 (10272527)
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Keywords | 漆 / 安定同位体比 / 産地同定 / 縄文ウルシ |
Research Abstract |
日本産漆液資料(岩手県、兵庫県、岡山県産)、中国産漆液資料(4地点で採取された市販の漆材料)、ベトナム産漆液を入手し、一定条件で酸化重合により硬化させ、漆塗膜を作成した。これらの適量を処理して、ストロンチウム同位体比を測定した。同位体比分析の結果、日本産の3資料、中国産の4資料は、それぞれ類似した同位体比のグループを形成していることが判明した。日本産は^<87>Sr/^<86>Srが、0.707-0.709であるのに対して、中国産は0.712-0.719であり、明瞭に区別できることが判明した。なお、ベトナム産は、0.745という特異な値を示している。 いわゆる漆は東南アジア地域に広く分布していて、3種類の系統が知られている。日本・中国漆、ベトナム漆、タイなどのブラックツリーで、それぞれの系統は、化学成分が異なるため化学分析によって識別できるが、日本産と中国産は同系統で化学分析によっては、識別することが出来ない。ストロンチウム同位体比により、両者を識別することを初めて可能にした。この差は土壌の差を反映していると考えられる.ウルシにおいても土壌と樹液の間にSr同位体比の相関があることが示唆される.産地の絞込みや産地での土壌のストロンチウム同位体比の変化幅などの情報を蓄積する必要があるが、ストロンチウム同位体トレーサーは漆の産地決定に有効に利用できる可能性を示した。 今後、この産地同定法を遺跡出土品などに適用すれば、縄文時代における漆文化の起源や,時代による交易圏の変遷を考える手がかりになりうると予想される.
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Research Products
(1 results)