2007 Fiscal Year Annual Research Report
カール・ワルドマンとその構成主義的コラージュ作品に関する図像書誌学的研究
Project/Area Number |
19652009
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Exploratory Research
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西野 嘉章 The University of Tokyo, 総合研究博物館, 教授 (20172679)
|
Keywords | アヴァンギャルド / ワルドマン / 構成主義 / コラージュ / 前衛 |
Research Abstract |
カール・ワルドマンとその構成主義的コラージュ作品に関する図像書誌学的研究 本年度は、カール・ワルドマンに関する資料提供者として想定していた、ブリュッセルのパスカル・ポラール氏、ストラスブールのローランス・ベナムー夫妻との面談調査の日程調整がつかなかったため、海外調査日程を2008年度以降に繰り延ばすこととし、国内での調査研究として、 1)コラージュに関する国内外の資料収集、2)カール・ワルドマン作品の放射性炭素年代測定の2点を中心に、作業を進めることにした。1)については、研究の初年度にあたるため、向こう3年度にわたって必要とされるコラージュ関連の基本文献の収集と読解を行った。2)については、国内にもたらされている、台紙、印刷物、壁紙、木質などのミクストメディア・コラージュ作品2点(個人蔵)について、破壊分析可能な箇所からセルロースなど、有機系素材サンプルを抽出し、東京大学のタンデム加速器を用いて、放射性炭素の残量の解析を行った結果、複数のサンプルから、作品の年代決定において有意的なデータを取得することができた。これは、近年にわかに注目されるようになった「ワルドマン」の存在について、それを捏造ではないかとする見方がヨーロッパに根強くあり、その真贋論争に対し、実証的な根拠をもって応える必要があると考えたからである。解析の結果、少なくともコラージュ材料の年代については、贋作として退ける理由が見つからなかった。しかし、コラージュの場合には、古い材料による新しい制作物である可能性もいちがいに否定できないため、次年度以降、材料の固定に使われた有機媒材について、年代比定を行い、真贋鑑定をより精度の高いものにしたいと考えている。
|