2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19653005
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Research Category |
Grant-in-Aid for Exploratory Research
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山形 英郎 Nagoya University, 大学院・国際開発研究科, 教授 (80222363)
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Keywords | 住民保護責任 / 保護する責任 / グローバリゼーション / 国際法の公法化 / 文明国 / 人間の安全保障 / 阻止義務 / イラク戦争 |
Research Abstract |
住民保護責任という新しい概念を通して、国際法のグローバル化という現象を検討した。グローバリゼーション下の国際社会においては、従来と異なる国際法が必要とされている。新たな文明国概念や、国際公法という概念が、国際法学会で議論され始めたのは、その一例である。伝統的な国際法秩序が妥当しなくなりつつあることが、暗示されているのである。伝統的な国際法秩序の特徴が、(1)国家の法主体性が容認され、(2)国家の統治権が承認され、(3)合意によって国際法が形成されることにあるとすれば、国際公法とはこうした考え方を否定することから発生する。そして、住民保護責任という考え方は、まさにこうした新たな国際法秩序の形成を示唆する。なぜなら(1)人権や民主主義を擁護しない国家は国家主権が制限され、(2)国際社会の介入を受忍することになるが、(3)国連の安全保障理事会を中心にこうした介入が決定され、国家の同意や合意は必要とされない。したがって、住民保護責任という考え方は、まさにグローバル化する国際法の重要な一要素となる。そして、こうした新たな国際法は、伝統的国際法が基礎としていた価値相対主義を否定し、人権・民主主義という絶対的な価値を擁護する国際法規範である。しかし、その一方で、住民保護責任という考え方が、国際法によって容認されたかどうかについては、疑問の余地がある。国際社会に必要なことは、合意形成プロセスを通して、こうした規範を生成することであり、国際公法秩序の成立を語るのは、依然として、早計である。
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