2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19653012
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
柴尾 健一 Kyushu University, 大学院・法学研究院, 専門研究員 (70448398)
|
Keywords | ジェンダー / 医療の政治社会史 / 博愛 / 国民国家 |
Research Abstract |
本研究の目的は、日清・日露戦争期に軍部が進めた戦時衛生事業を補完した唯一の社会集団、日本赤十字社(以下、日赤と略す)の救護活動に着目することで、戦時体制に日本女性がどのように組み入れられていくのか、この展開過程を明らかにすることである。日清・日露戦争期は、「国家補助事業」と位置づけた日赤の「社礎の確立期」であるばかりか、軍部なかでも陸軍衛生部との相互関係を強固にした時期でもあった。本研究では、この時期を対象に女性の戦時動員過程を2つの分析視角、言説分析および実証分析から明らかにしようと考えている。前者の言説分析は、当該期における女性の言説空間を婦人雑誌、国定修身教科書、そして日赤刊行物を対象に分析をすすめることで、同空間内における語りの論理構造を明らかにしている。また後者の実証分析は、軍部の戦時衛生事業に看護婦として初めて女性が動員された日赤救護活動について一次史料を対象に言説空間との連関を考慮しながら分析をすすめている。 以上を踏まえ、19年度における進捗状況を簡単にふれる。当年度の主眼は、史・資料の調査・収集にあった。史・資料の調査・収集状況は、実証分析に必要とする日赤一次史料ならびに言説分析で必要とする婦人雑誌、国定修身教科書、日赤刊行物は、19年度内にほぼ修了することができた。このことにより20年度は、引き続き史・資料の調査・収集を行いつつ、対象となる史・資料の分析を丹念にすすめていきたいと考えている。
|