2007 Fiscal Year Annual Research Report
経済数学としての積分方程式-貨幣のサーチ・モデルへの応用を通して-
Project/Area Number |
19653017
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Exploratory Research
|
Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
佐橋 義直 Osaka Prefecture University, 経済学部, 教授 (30324445)
|
Keywords | 貨幣のサーチ・モデル / 均衡の不決定 / 積分方程式 / 固有値 / differential game |
Research Abstract |
本研究は、貨幣のサーチ・モデルなどへの応用という形で、積分方程式の理論の経済モデルへの適用の可能性を模索するものであり、特に平成19年度は、貨幣のサーチ・モデルにおける均衡の不決定の問題に集中的に取り組んだ。貨幣のサーチ・モデルにおいては、これまで、貨幣の分割可能性を仮定する時、均衡の不決定の問題が発生することが経験的に知られているが、その発生のメカニズムは十分に解明されているとは言いがたい。ところで、貨幣のサーチ・モデルにおける均衡を数学的に描写するためには、一連の微分方程式とその初期条件、横断条件を用いることもできるが、これを、非線形の積分方程式を用いて記述しなおすことも可能である。特に積分方程式を用いて均衡を記述する場合、均衡の不決定の問題は、ある均衡の近傍でこの積分方程式を線形化したものが1を固有値として持っていることとほぼ同一視することができる。平成19年度の研究においては、貨幣のサーチ・モデルを、より一般的なdifferential gameの枠組みの中で捉えなおし、その中で貨幣のサーチ・モデルに特有な性質からの帰結を検討することで、貨幣のサーチ・モデルの均衡の不決定の問題が、貨幣の中立性あるいはモデルの諸構成要素が基本的には貨幣の単位に決定的には依存しないという性質と密接に関係している可能性を見出すことができた。このことは、マクロ経済の視点から見れば、交換の媒体としての貨幣と均衡の不決定あるいは経済の不安定性の要因としての貨幣を切り離して考えることは難しいという重要な示唆を与えるものである。
|
Research Products
(2 results)