2007 Fiscal Year Annual Research Report
地域文化の変容からみた近代教育システムの形成に関する比較史研究
Project/Area Number |
19653094
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Exploratory Research
|
Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
越水 雄二 Doshisha University, 社会学部, 准教授 (40293849)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷川 精一 相愛大学, 人間発達学部, 教授 (40269824)
北澤 義之 京都産業大学, 外国語学部, 教授 (90257767)
|
Keywords | 地域文化 / 近代教育システム / ブルターニュ / 沖縄 / ヨルダン |
Research Abstract |
本研究は、ブルターニュ、沖縄、ヨルダンという3地域での主に18世紀から20世紀後半に至る時期の文化変容を次の三つの観点から比較考察することによって、近代教育システムの形成に認められる国民国家枠を超えた共通の性質と、異なる文化・社会的背景がその機能にもたらした地域別の特徴とを解明しようとするものである。 (1)近代的学校制度が地域社会へ普及する過程。その中での学校教育の変化。 (2)地域言語(「方言」)と国家の標準語(「国語」)の使用をめぐる葛藤。 (3)国民教育によるナショナルなシンボルと地域生活の中のエスニックなシンボルとの関係。 17世紀に、イエズス会が運営するコレージュ(中等教育機関)の教師たちは、パリからみた後進性ゆえに、ブルターニュを国内における「インド」だと呼んでいた。つまり、文明化すべき野蛮な地域と見なしていたのである。しかし、18世紀を通じて同地域の東半分(パリに近い側)では、コレージュや、庶民に読み書きとキリスト教を教える初等学校も徐々に広まり続け、1760年代には中心都市レンヌにある高等法院のラ・シャロテが、学校教育の普及を既存の社会秩序に対する脅威として批判するまでになっていた。このようなアンシアン・レジーム期の蓄積を前提に、フランス革命後の19世紀以降、公権力と教会勢力とが競合しながら学校教育をさらに普及させた過程で、地域言語のプレイス語は、国家の標準フランス語を教える補助手段として従属的に用いられた。けれどもまた反対に、プレイス語は、文明化が人間にもたらす退廃を免れ地域文化の基層をなすケルト文化へ通じる言語として、ブルターニュの文化人だけではなく中央や国外の文化人によっても価値を認められ保存と継承に努められるようになった。 以上、ここでは紙幅の制約から研究代表者が担当するブルターニュの事例のみ概略を記したが、沖縄とヨルダンについても分担者がそれぞれ同様の調査を進めており、今後、上記の三観点からの比較考察を本格的に深めていきたい。
|