2008 Fiscal Year Annual Research Report
人類の地上生活の獲得と森林内微気象-野生Pan属の空間利用からのアプローチ-
Project/Area Number |
19657074
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
竹元 博幸 Kyoto University, 野生動物研究センター, 教務補佐員 (80379015)
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Keywords | 人類学 / 進化 / 生態 / 類人猿 / ホミニゼーション / 熱帯林 / 果実量 / 気温 |
Research Abstract |
Takemoto(2004)は、チンパンジーの地上利用頻度に季節差があるのは、樹上果実量が多いときに樹上を良く利用するためではなく、気温が高い季節は地上部が過ごしやすい気温になるためだと結論している。熱帯林内の林冠付近は地上部にくらべ気温が高いのが一般的傾向であると言われているが、アフリカの大型類人猿調査地で気温の垂直構造が測定された事はない。本研究は、熱帯林内の食物量と気温や湿度など物理環境の変動を地上部から林冠までの垂直構造とともにとらえ、野生チンパンジーとボノボの森林内空間利用がどのように変化するかを明らかにすることである。今年度は野生ボノボについて調査を行った。乾季の気象資料は過去に収集していたものを用いた。 本年度の調査は西アフリカ・コンゴ民主共和国のワンバ地域で、雨期にあたる2008年9月から11月におこなった。一次林では、地上1.5m・10m・20m・27m(樹冠は30m)、湿地林では1.5m・11m・20m(樹冠30m)の、各々4カ所および林内ギャップに自動温湿度記録計を設置し、10分ごとに気温と湿度を記録した。 調査期間中の日中最高気温を平均すると、林冠部と地上部の気温差は雨季で約5℃、乾季で大きくなり、約9℃であった。ただし、同じ高さで比較すると、季節差はおよそ2℃であった。一次林と湿地林の違いは大きくなかった。樹上果実は雨期が乾季の3倍ほどの果実量があった。 ボノボの地上利用時間は雨期も乾季も観察時間の27%で、全く季節差がなかった。昨年度おこなった西アフリカ・ボッソウ地域の季節差(第24回日本霊長類学会にて発表)に比べ林内気温の季節変化がずっと小さかった事が理由としてあげられるが、今後個体追跡の資料を分析して、チンパンジーとボノボの地上性の違いの理由を追及していく予定である。
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Research Products
(1 results)