2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19673001
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
五百籏頭 薫 The University of Tokyo, 社会科学研究科, 准教授 (40282537)
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Keywords | 政治学 / 政治史 / 条約改正 |
Research Abstract |
研究協力者と共に運営する研究会においては、各行政領域の発展史について引き続き知見を蓄積すると共に、これと条約改正史との連関を問う議論が佳境に入った。末尾で述べる分析視覚の進展に大きく貢献した。 吉野作造講義録の翻刻・分析作業は順調に進み、第一段の刊行が完結した。講義の変遷は、ヨーロッパ政治史・国際政治史の研究から明治文化研究に代表される日本史研究に軸足を移す経緯と重なりあっており、長い研究史を代表する一人である吉野において、両者の関係がどのように観念されていたかについての知見を深めることができた。 研究協力者(稲吉晃)がイギリス、ならびに日本海沿岸に出張し、主に港湾整備をめぐる行政と国際環境の関係を示唆する史料を収集し、以下に述べる分析の素材を提供した。 研究計画、ならびに前年度までの研究においては、条約改正交渉における行政権回復要求の盛衰と交渉全体への影響が主たる分析対象として意識されていた。これに対して、本年度の分析上の最大の成果は、条約改正交渉を通じた行政イメージの変遷を、行政の実態と関連付けながら解明した点である。これは、条約改正史における新しい問題地平の発見といえる。行政にあった現場志向(「地方性」)が、文明化の遅速から相対的に自立した尺度として機能することで条約改正要求を活性化させる一方で、交渉の進展と共に後景に退いていくダイナミックな過程として交渉史を展望することができた。 以上の成果を元に、条約改正交渉に関する単著『条約改正-法権回復の展望とナショナリズム-』の執筆を本格化することができた。
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Research Products
(7 results)