Research Abstract |
今年度の研究は,大学構内発掘調査事業の突然の介入があり、ほほ1年間,大学の発掘作業に従事しなければならないという事態となり,研究の若干の変更も余儀なくされたが,おおむね,研究は遂行できた。 備蓄された自然科学分析を行うために,研究協力者である高宮広土氏を招へいし,ウォーター・フローテーションの指導をいただくとともに,その分析を行なった。また,トマチン遺跡の石棺墓の3D画像処理作業を行ない,遺物整理作業も学生のアルバイトを雇用し,順調に進めることができた。 年度末には徳之島トマチン遺跡の発掘調査を行なった。周辺地形の測量調査並びに,地中レーダー探査で墓域があると考えられた場所に試掘トレンチを設け,地中レーダーの信憑性を模索した。その結果は残念ながら,地中レーダーに反応した場所のひとつは,後世の撹乱による天地返しの土壌塊に反応したものとみられ,また,もう一つの場所は,骨片の出土はみたものの,墓という明確な遺構を捉えることはできなかった。そのため,地中レーダー探査は,やはり人力による発掘と精査によって裏づけられる必要性があることが確かめられた。石棺墓1の調査では,埋葬遺構のあった底石を取り外して下部を調査したところ,さらに1体分の伸展葬人骨が出土し,頭部が骨化後,二次的に抜き取られているという注目すべき事例が判明した。石棺墓内でこのような状態で被葬者が確認されることは類例がなく,南西諸島の墓制を考える上でも,重要な位置づけになる。また,石棺墓2上部には,ガラス玉が出土し,そのことから,蓋なし(石棺墓1)→蓋あり(石棺墓2)の構築順序が推定可能となった。その遺跡の重要性に鑑み,奄美諸島の地元新聞2社と,鹿児島県の新聞社1社に取り上げられることとなった。
|