2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19682004
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
渡部 森哉 Nanzan University, 人文学部, 講師 (00434605)
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Keywords | 考古学 / 先史学 / ペルー / アンデス / ワリ / ティワナク / 国家 |
Research Abstract |
2006年8月、9月の3週間にペルー北部高地に位置するパレドネスにおいて発掘調査を実施した。2007年8月、9月には6週間ペルー共和国に滞在し、同遺跡の出土遺物整理を行った。出土土器の全てをタイプ分類し、破片数を数えた。代表的な土器サンプルを抽出し、写真撮影、実測図の作成を行った。日本において実測図のトレース作業を開始した。石器や金属器など、土器以外の遺物については写真撮影のみを行い、実測図の作成は未了である。また予定していたヘケテペケ川上流域の遺跡分布調査は実施しなかった。 パレドネス遺跡の調査によって、ワリ期(A.D.700-900)のカハマルカ地方に生じた社会変化を示す重要なデータが得られた。ワリ期にヘケテペケ川中上流域にチュルパと呼ばれる地上墳墓が現れることが確認できたが、それがどこに系譜がたどれるかは未確認である。出土土器の大半はカハマルカ文化のものであり、カハマルカ中期(A.D.550/600-900)の土器編年を精緻化する事ができた。またティティカカ湖南岸を中心に繁栄したティワナク文化の特徴を有した土器が出土したが、これは現在知られている最北の事例である。従来ワリ期には、ペルー南高地を中心に台頭したワリ国家と、ティワナク国家が競合関係にあったといわれていたが、そうしたモデルを再考する必要がある。ティワナク文化の土器のみならず、ペルー北海岸系の土器や中央海岸系の土器が出土しており、この時期に人間集団の移動があったと考えられる。インカ国家をモデルとすれば、ワリやティワナクといった大規模な政体の支配下でとられた政策である可能性がある。 周辺地域で遺跡分布調査を実施し、周辺諸遺跡とパレドネス遺跡のデータを比較検討することが今後の課題となる。
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