2009 Fiscal Year Annual Research Report
心不全に関わるG蛋白質シグナリング経路の解析と新たな治療標的の探索
Project/Area Number |
19689003
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
西田 基宏 Kyushu University, 大学院・薬学研究院, 准教授 (90342641)
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Keywords | 薬理学 / シグナル伝達 / カルシウム / G蛋白質 / 心不全 / イオンチャネル |
Research Abstract |
交感神経系やレニン・アンジオテンシン系の機能亢進によって誘発される心臓の形態変化(心肥大や線維化)は、心機能不全を進行させる要因として重要視されている。アンジオテンシン(Ang)IIなどの心肥大誘発性アゴニストはG_q蛋白質共役型受容体を活性化し、細胞内Ca^<2+>濃度の上昇による転写因子nuclear factor of activated T cells (NEAT)の活性化を介して心肥大を誘発する。我々は、ホスホリパーゼC (PLC)の活性化により生成されるジアシルグリセロール(DAG)が細胞膜の脱分極を誘発することで電位依存性Ca^<2+>チャネルを活性化し、Ca^<2+>流入とそれに続くNEAT活性化を誘発することを見出した。さらに、DAGを介した脱分極には、transient receptor potential (TRP)チャネル(TRPC3/TRPC6ヘテロ複合体チャネル)を介した陽イオン流入が重要や役割を果たすことを明らかにした。TRPC3/6チャネルを抑制する化合物のスクリーニングを行い、TRPC3/6チャネル抑制作用を持つ化合物として新たにシルデナフィルとpyrazole-3 (Pyr3)を同定した。シルデナフィルはprotein kinase Gの活性化によりTRPC6のThr69残基をリン酸化することでTRPC6チャネル活性を抑制すること、その一方で、Pyr3はTRPC3チャネルを直接的に抑制することを見出した。さらに、Pyr3をマウスに投与し、圧負荷で誘発される心肥大に対する効果を調べた結果、Pyr3は圧負荷による心肥大とそれに伴って生じる収縮機能の減弱を顕著に改善させた。以上の結果から、TRPC3/6チャネルが心不全治療薬の新たな標的分子となる可能性が示された.
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