2007 Fiscal Year Annual Research Report
物の操作を尺度としたヒトとチンパンジーの比較認知発達
Project/Area Number |
19700245
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
林 美里 Kyoto University, 霊長類研究所, 助教 (50444493)
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Keywords | 比較認知発達 / 物の操作 / チンパンジー / 対面課題 |
Research Abstract |
物の操作を指標として、チンパンジーとヒトの認知発達について直接比較をおこなった。積木などの物を使った課題を対面場面で実施して、その操作を分析した。形を変えてわざとつみにくくした積木を使った課題では、チンパンジーがヒトと同じような認知能力をもつことが明らかになった。立方体の積木に加え、円柱・三角柱・台形・突起つきの積木を提示して、そのつみ方を分析した。ヒトは1歳で立方体・円柱の積木をつみはじめ、2歳台で三角柱以降の積木をつむようになった。チンパンジーも経験によって、これらの形の積木を効率的につむようになった。一方で、同じように積木を使った課題でも、他者が作ったお手本を参照する課題になると、チンパンジーとヒトの違いが明確にあらわれた。他者が作ったお手本と同じ色の順番になるように、積木をつむという課題をおこなった。ヒトは2歳台でお手本を参照して積木をつむようになった。チンパンジーの場合、おとなでは長い訓練期間をへて2個の積木をお手本と同じ色の順番でつむようになった。しかし、積木の数が3個になると課題の学習は困難だった。積木の物理的な特性の理解と、恣意的なお手本をまねるというルールの理解が、ヒトでは同じような時期に獲得されるにも関わらず、チンパンジーでは異なる結果が得られた。両種の認知発達の相違点について詳しく知る上で重要な知見となる。これらの結果について分析をおこない、学会などで発表するとともに英語論文として投稿中である。西アフリカの野外フィールドにおける観察研究もおこない、野生のチンパンジー乳幼児の物の操作についてもデータの収集をおこなった。
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Research Products
(7 results)