2008 Fiscal Year Annual Research Report
物の操作を尺度としたヒトとチンパンジーの比較認知発達
Project/Area Number |
19700245
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
林 美里 Kyoto University, 霊長類研究所, 助教 (50444493)
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Keywords | 比較認知発達 / 物の操作 / チンパンジー / 対面課題 |
Research Abstract |
チンパンジーとヒトの認知発達を直接比較するため、非言語性の比較尺度として物の操作に着目して研究をおこなった。積木やカップなどの物を使った課題を対面場面で実施して、その操作を分析した。立方体の積木に2個の突起をつけて、わざとつみにくくした積木を使った課題では、経験によってチンパンジーが効率的に積木をつむ行動を学習できることが示された。ヒト幼児の縦断的研究からは、3歳頃から効率的に積木の向きを変えてつむことができるようになった。一方、同じ積木を使っていても、他者が作ったお手本と同じ色の順番になるように積木をつむ課題は、チンパンジー幼児にとって学習が困難だった。おとなのチンパンジーでは、長い訓練後に2個の積木をお手本と同じ色の順番でつむようになったが、積木の数が3個になると正しい順番でつむことはできなかった。ヒト幼児では2-3歳にかけて、お手本にあわせて正しくつめる積木の個数が徐々に増加した。両課題の結果をそれぞれまとめ、英語論文として投稿した。両課題の背景に、物理的・普遍的なルールに従って積木をつむことと、社会的・恣意的なルールに従って積木をつむことという違いを想定し、その中間として「自らルールを作って」物を操作するかを調べる課題をおこなった。9個の升目がついた箱に色や形が異なる積木を自由に配置する課題を用いて、チンパンジーとヒトの分類的な配置行動の有無を調べた。チンパンジーにも、萌芽的ではあるが自発的な分類行動がみられるという結果が得られつつある。チンパンジーとヒトの発達の直接比較から得られた成果について、国内外の学会で発表するとともに、一般向けの講演などもおこなった。
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Research Products
(10 results)