2009 Fiscal Year Annual Research Report
物の操作を尺度としたヒトとチンパンジーの比較認知発達
Project/Area Number |
19700245
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
林 美里 Kyoto University, 霊長類研究所, 助教 (50444493)
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Keywords | 認知発達 / 種間比較 / 物の操作 / 対面検査 / チンパンジー |
Research Abstract |
ヒトの認知機能の進化的な基盤を探るため、ヒトにもっとも近い生物であるチンパンジーと、ヒト幼児の認知発達を直接比較する研究をおこなった。物の操作を比較の尺度とした発達研究から、チンパンジーは、ヒト幼児と同様に物理的な特性などの普遍的ルールにしたがって、形の違う積木をつむことができた。ところが、見本を参照して社会的・恣意的ルールにしたがって、色のついた積木を見本と同じ順番につむことは、ヒト幼児に比べてチンパンジーにとっては困難なことが明らかになった。両課題の中間的特徴をもつ課題として、内的なルールにしたがって物を操作することがあるのかを調べた。9個の枡目がついた箱に、色や形が異なる積木を自由に配置する課題を、チンパンジーとヒトの幼児に対面場面で実施した。その結果、チンパンジーも予め手がかりが与えられると、1-2割の試行で分類的な配置を自発的におこなうことがわかった。ヒト幼児では、3-4歳に分類的な配置をおこなうことが増え、4歳半以降になると行列が均等になるように配分する行動が見られるようになった。ヒトの発達では、色よりも形を手がかりにして分類するほうが先行していたが、チンパンジーは先行研究とは異なり、形も色も同程度に分類の手がかりとしていた。チンパンジーにも、二次元平面上における色や形に基づいた自発的な分類行動の萌芽が見られたといえる。チンパンジーがどのような心を持ち、それがどのように長期的な発達をするのか、今後もヒトの認知発達との直接比較を続けたい。
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Research Products
(15 results)