2008 Fiscal Year Annual Research Report
BDNFによる抑制性細胞を介した体性感覚野臨界期可塑性の制御メカニズム
Project/Area Number |
19700293
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
伊丹 千晶 Saitama Medical University, 医学部, 講師 (90392430)
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Keywords | 大脳皮質 / 体性感覚野 / スパイクタイミング可塑性 / GIBA / BDNF / 受容野マップ可塑性 |
Research Abstract |
脳由来神経栄養因子(BDNF)は、体性感覚野の発達期可塑性に重要な役割をはたすことが示されており、我々はこれまでに、体性感覚野第4層に存在するGABA作動性抑制性細胞のサブタイプのひとつであるパルブアルブミン陽性fast spiking細胞の電気生理学的性質にはBDNFが必要であることをBDNFノックアウトマウスをもちいて示してきた。また、4層から213層錐体細胞への興奮性シナプス結合の可塑的変化は、大脳皮質の受容野マップ可塑性に重要であると考えられているが、4-2/3層間シナプス可塑性は、スパイクタイミング依存性であり、シナプス前細胞-シナプス後細胞の順に発火するとシナプス増強(t-LTP)になるが、この順序が逆になるとシナプス抑制(t-LTD)になることが示されており、発火順序を制御するためにPV-FS細胞が重要な役割を果たしている可能性がある。さらに、4-2/3層におけるスパイクタイミング依存可塑性(STDP)とPV-FSの機能発現の時期はほぼ一致している。そこで本実験は、PV-FS細胞の発達前後でSTDPがどのように変化するかを検討した。実験は、野生型マウスから1次体性感覚野を含むスライス標本を作製し、4-213層シナプス結合におけるt-LTP及びt-LTDの誘導条件を臨界期前後で比較した。その結果、臨界期(P13以降)以前では、スパイクタイミングに関係なくシナプス前-後でもシナプス後-前の順でもLTPが誘導された。臨界期後の4-2/3層シナプス結合におけるt-LTPには、NMDA受容体を介した細胞内Ca2+上昇が必要であることが示されている。そこで、臨界期以前に観察されたt-LTPのNMDA受容体依存性を検討する目的でNMDA受容体の阻害剤D-AP5を投与すると、15例中10例においてt-LTPは阻害され、NMDA受容体に依存することがわかった。次に、Ca2+キレート剤であるBAPrAを細胞内投与することにより細胞内Ca^<2+>上昇を抑えると、13例中10例においてLTPは阻害され細胞内Ca上昇が必要であることが示唆された。次に、CaMKHのinhibitorの投与したが、t-LTPを阻害することができず、P13以前のt-LTPはCaMKII-非依存性であることがわかった。以上より、臨界前には、GABA細胞により発火順序を制御される必要のないt-LTPが存在する可能性が示された。
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