2008 Fiscal Year Annual Research Report
二次嗅覚神経回路形成における軸索性細胞認識分子BIG-1の機能解析
Project/Area Number |
19700311
|
Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
水口 留美子 The Institute of Physical and Chemical Research, シナプス分子機構研究チーム, 研究員 (70450418)
|
Keywords | 二次嗅覚経路 / 細胞認識因子 / BIG-1 / 僧帽細胞 / lateral olfacroty tract(LOT) / olfactory ensheathing glia(OEG) |
Research Abstract |
嗅球僧帽細胞で領域特異的に発現する軸素性細胞認識因子BIG-1の機能を明らかにすることを目的として、昨年度に引き続き、 BIG-1遺伝子座に膜移行型蛍光タンパク質gap-Venus遺伝子を挿入した遺伝子ターゲッテイングマウスの解析を行った。昨年度の結果より、BIG-1発現僧帽細胞の軸索はlateral olfactory tract(LOT)の特定の領域を通って、前嗅核(anterior olfactory nucleus)、嗅結節(olfactory tubercle)、梨状葉皮質(piriform cortex)などに投射することが示されている。昨年、僧帽細胞の軸索が同側の前嗅核外節(AONpE)と呼ばれる領域にtopographicに投射し、左右の嗅球間の情報交換に重要な役割を果たすことが報告された(Z.Yan et al. Neuron 2008)。BIG-1は嗅球内で領域特異的な発現勾配を示すことから、このtopographicな投射の制御に関与している可能性が示唆された。そこでヘテロおよびホモの個体を用いて抗GFP抗体による免疫組織化学を行い、AONpEにおけるgap-Venus陽性軸索の投射パターンに着目して調べたが、BIG-1の欠失による目立った異常は発見できなかった。BIG-1は僧帽細胞以外にも、発生期にolfactory ensheathing glia(OEG)で非常に強く発現している。また、硫酸亜鉛によりマウスの嗅上皮を人工的に除去すると、OEGにおけるBIG-1の発現誘導が認められた。OEGは軸索伸長や神経再生を促進する活性を持つことから、BIG-1が嗅細胞の発生および再生過程において、嗅球への軸索投射を制御している可能性が考えられた。そこで、BIG-1欠失マウスで、発生期および再生期における嗅神経細胞の軸索投射や糸球体形成に遅延等の異常が認められないかを調べたが、明らかな異常は見つからなかった。これらの結果から、BIG-1は嗅覚神経回路形成において単独では必須な役割を持たず、他の細胞認識因子などとの相互作用によりこその機能が発現している可能性が示された。今後はBIG-1と他の細胞認識因子との機能的相互作用について、ダブルノウクアウトマウスなどを用いた解析により明らかにしていくことが課題であると考えられる。
|