2009 Fiscal Year Annual Research Report
サルコペニア対策としての熱刺激の有用性に関する実験的アプローチ
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19700437
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
中野 治郎 Nagasaki University, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教 (20380834)
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Keywords | リハビリテーション / 廃用性筋萎縮 / 熱刺激 / 熱ショックタンパク質 / 酸化ストレス / 骨格筋 |
Research Abstract |
本研究では、運動負荷による筋力トレーニングが適応できない高齢者に対する廃用性筋萎縮とサルコペニアの予防方法として、熱刺激を利用した筋萎縮の進行抑制方法の開発を目的としている。昨年度までの結果によれば、熱刺激は60週齢の加齢ラットにおける廃用性筋萎縮に対して好影響を及ぼすものの、酸化ストレスに対しては影響を及ぼさなかった。その原因としては、老齢モデルラットの加齢(60週齢)が不十分であったため、骨格筋においてサルコペニアに伴う酸化ストレスが十分でなく、また炎症性サイトカインの動態も少なかったこと等があげられた。そこで今年度は、100週齢の老齢ラットを作成・飼育しつつ、疑似老化骨格筋として後肢懸垂(HS)による廃用性筋萎縮進行モデルを作成し、それに対する熱刺激の影響を検討した。加えて、本研究を次ぎの展開に繋げる目的に、熱刺激と同じメカニズムにより筋萎縮の進行抑制効果が見込める低出力レーザーを用いて実験を行った。7週齢のWistar系雄ラットを対照群と実験群に振り分け、実験群には2週間のHSを施して下肢骨格筋に廃用性筋萎縮を惹起させた。その後、実験群を1)HSを解除して通常飼育する群、2)HSを持続しながら熱刺激を負荷する群、3)HSを持続しながら熱刺激と荷重を負荷する群、5)HSを解除してレーザー照射する群に振り分けた。実験期間は2週間とし、熱刺激、荷重は隔日、レーザー照射は毎日行った。実験終了後、ヒラメ筋または腓腹筋を採取し、各タイプの筋線維直径、HSP70含有量、毛細血管数、各種サイトカインを測定した。結果、廃用性筋萎縮進行モデルに対して熱刺激を加えると、HSP70の発現と筋萎縮の進行抑制効果が認められ、また熱刺激と荷重の併用による助長効果が確認された。しかし、筋萎縮の進行を完全に予防し、筋線維肥大を誘導することはできなかった。一方、同モデルの回復過程において低出力レーザーを照射すると、筋萎縮の回復、ならびに毛細血管、筋衛生細胞、成長因子の増加が認められたが、HSP70の発現は確認できなかった。以上のことから、熱刺激はサルコペニア、特に筋萎縮に対して好影響を及ぼすが、それだけで回復を被ることはできず、他の運動刺激との併用が重要と思われた。また、低出力レーザーによっても同じ効果が期待することができるが、そのメカニズムは熱刺激の場合と異なることが示唆された。
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Research Products
(12 results)