2008 Fiscal Year Annual Research Report
オセアニアにおける新たな開発援助としてのスポーツの活用可能性に関する研究
Project/Area Number |
19700507
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
小林 勉 Chuo University, 総合政策学部, 准教授 (20334873)
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Keywords | 国際協力 / オセアニア / ソーシャル・キャピタル / スポーツ振興 |
Research Abstract |
オーストラリアやニュージーランドなど先進諸国のスポーツ政策の動向を整理しながら、近年、スポーツを開発のプロセスにおいて活用するという潮流が台頭している趨勢について検討した。とりわけオーストラリアのスポーツ政策の大きな特徴として、「ソーシャル・キャピタル」という概念が導入され始めたことが挙げられる。そして、このソーシャル・キャピタルが集積された社会への見取り図としてスポーツへの期待が高まり、スポーツ振興が国家的に展開されるという全体的なスポーツ政策の動向について跡付けた。地域活性化やコミュニティ開発のシンボルとして、開発のコンテクストにおける地歩を固めつつあるスポーツだが、スポーツ振興の意義がソーシャル・キャピタルと関係づけられて語られるようになってきた理由には、少なくとも以下のような政府の意向が存在する。 1. 小さな政府が指向されるなかで「政府の役割を補完するもの」としてスポーツ組織に期待を寄せているということ。 2. 数ヵ年で政策評価が下され、課題達成率が客観的に可視化される政策が優先されがちとなるなかで、実際に政府は国際競技力の向上を焦点化し、政策課題の達成度を可視化、スポーツ振興に対する政権の実行能力の可視化を求めるようになってきている。そうしたコンテクストにおいてソーシャル・キャピタルは、公的資金をスポーツに投入する建前として充分公平な表現を備えているため、国際競技力を高める施策に対する絶好の説明理由のひとつとなってきているということ。 このように、スポーツとソーシャル・キャピタルとが結び付けられる背景には、「スポーツそのものの発展」とは異なる次元で政府の政治願望がまぎれこみ、時にきな臭い政治性を帯びながら、そこにはいくつもの検討すべき陥穽があるということを明らかにした。
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Research Products
(1 results)