2010 Fiscal Year Annual Research Report
「連携」概念を用いた家政学の新しい専門性に関する基礎的研究
Project/Area Number |
19700563
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
小林 陽子 群馬大学, 教育学部, 准教授 (60403367)
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Keywords | 家政学 / 専門性 / 連携 / 社会貢献 / 管理栄養士 / 修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ |
Research Abstract |
本研究は、多様化・複雑化する生活問題を解決するために要請される連携能力に着目している。今年度は、昨年から引き続き、家政学教育に必要とされる連携能力を明らかにするために、家政系学部から就職者を多数輩出する管理栄養士の連携能力形成プロセスとその質を左右する因子を明らかにした。とくに、近年、栄養士法改正や栄養療法に関する診療報酬の改定により、連携能力を必要とし、他職種と組織的な連携・協力を行っている医療分野で働く管理栄養士を対象に連携に関するインタビュー調査を実施した。分析方法は修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いた。 結果以下のことが明らかになった。医療分野で一定の継続した実践経験をもつ管理栄養士は、職場内連携努力プロセスと職場外連携努力プロセスを双方向に経験しながら連携を深化させていた。また、これらの連携の質を左右するものとして、制度の仕組み、高度な専門知識や技術、総合的なマネジメント能力3点が影響していた。 本研究の最終目標である、新しい家政学教育のカリキュラム開発のために、得られた知見をどのように生かすことができるのか考えてみたい。今回生成された管理栄養士の連携能力形成プロセスは、彼らが業務経験をとおして得たものであり、大学教育では獲得しづらいものと考えられる。しかし連携に影響を与える因子のうち、多様な患者の生活背景に対応する総合的なマネジメント能力や、高度な専門知識や技術は、大学教育のカリキュラム構成に導入でき、現行の管理栄養士養成のカリキュラムにおいても実践されている。家政学教育としての独自性を求めるならば、総合的なマネジメント能力の育成は、栄養という専門からの視座だけではなく、患者の生活全体を読み取る意味で、栄養以外を専門とする学生との学び合いから実現したい。こうした学びが家政学的な視点につながると思われるし、連携形成能力の質を高めることにもつながると考える。 しかし以上は、医療分野で働く管理栄養士を対象とした調査から導き出された知見からの提案である。今後は家庭科教諭などの他職種を対象にした同様の調査を実施し、さらに家政学教育に必要とされる連携能力を追究してゆきたいと考える。
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