2008 Fiscal Year Annual Research Report
大腸菌O157に対する腸内細菌産生物質の抑制効果の検討
Project/Area Number |
19700588
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
戸嶋 ひろ野 Osaka University, 微生物病研究所, 特任研究員 (10400532)
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Keywords | O157 / コリシン / 腸内細胞 |
Research Abstract |
本研究の目的は、腸管出血性大腸菌O157(O157)に対する殺菌物質(コリシン)を産生する細菌がヒト腸内で果たす役割を究明することである。 1. O157抑制物質の同定 ヒトの腸内細菌におけるコリシン産生菌の分布状況を明らかにし、O157制御に効果的なコリシンタイプを特定することを目標に、疫学調査により収集したO157殺菌するコリシン産生菌68株について産生しているO157抑制物質の同定を試みた。その結果、これらの株はグループAコリシンを多く産生していることがわかた。また、標的となるO157についてコリシン感受性を調べたところ、24株のうち23株はコリシンE2/3/5/6/7/8/9に、17株がコリシンDに感受性を示した。したって、これらのコリシンがO157の抑制に主要な役割を果たしていると考えられる。 2. コリシンがO157の病原因子に与える影響 O157の病原因子として宿主細胞に対する付着機能について、コリシンの影響を検討した。培養細胞にコリシン存在下あるいは非存在下でO157を感染させて、細胞へ定着するO157の菌数を集計すると同時に付着様式を観察した。その結果、O157の細胞付着性に対するコリシンの特異的な抑制効果は認められず、菌数抑制のみに作用することが推察された。しかしながら、コリシン非存在下においてO157は特有の局在性付着様式を示すのに対し、コリシン存在下ではO157の付着は認められるものの局在性付着様式を示すO157菌数が低下したことから、今後はO157のタイプIII分泌機構の遺伝子発現およびタンパク質発現について検討することで、詳細なコリシンの作用を明らかにできるものと考えている。
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