2009 Fiscal Year Annual Research Report
金属元素に起因する日本画用和紙の焼け現象解明と新抑制法の開発
Project/Area Number |
19700666
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
星 恵理子 Gakushuin University, 理学部, 客員研究員 (30376933)
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Keywords | 銅含有緑色顔料 / 緑青焼け / 岩緑青 / キレート剤 |
Research Abstract |
和紙表面に塗布した銅含有緑色顔料の分解から、顔料中のCu成分の拡散、また紙の劣化度合との相関関係について検討した。また、より激しい劣化を引き起こす真鍮粉や銅粉による焼けの劣化機構についても検討した。金属イオンを封鎖するキレート剤を用い、紙の参加劣化の抑制を検討した。 1.モデル試料の劣化促進試験 和紙と顔料で作成したモデル試料を加湿加温条件で劣化させ、劣化後および劣化過程を分析した。また、加湿加温条件の劣化促進試験の他に、実物の文化財が通常置かれる環境に近い大気暴露試験も行った。SEM、EDX、三次元蛍光分光分析およびICPS分析の結果、裏打紙中のCu元素の濃度は、劣化時間の増加とともに増加した。これは紙の変色傾向と一致し、試料表面の顔料由来のCu元素が本紙、裏打紙へと移行し紙の変色を引き起こしていることを示した。さらに、透過型電子顕微鏡による観察および分析で、劣化部に生成した、銅含有化合物を確認した。これらは顔料の分解化合物と考えられる。金属粉を塗布した試料の劣化試験後の生成物は、加湿加温条件下と、大気暴露環境下では異なる化合物が検出された。 2.薬品塗布による抑制法の開発 Cuイオンのキレート剤を3種選択し、これを浸漬させた試料と、紙に対する中和効果のある薬品処置を施した試料を作成し、これを劣化試験にかけた。これらの試料について、紙の変色、pH、セルロース粘度を測定した。その結果、キレート剤と炭酸カルシウムをともに用いたときに効果が見られた。
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Research Products
(3 results)