Research Abstract |
海域や湖水域に面して発達する扇状地はファンデルタや臨海扇状地と呼ばれる.日本列島は湿潤変動帯に位置し,激しい地殻変動や頻繁に起きる豪雨のため,土砂生産量が大きく,地形も急峻である.その結果,とくに中部山岳地域から太平洋・日本海に流出する河川の河口付近にファンデルタがみられる. ファンデルタに関する研究は,堆積物が礫に富むこともあり,その多くが空中写真判読やボーリング柱状図などをもとにした議論を展開しており,堆積過程などを論じるには十分な状態にあるとは言えない.また,絶対年代も不足している.本研究の目的は,地形と堆積物を結びつけ,ファンデルタの発達を解明することである. 今年度は,昨年度までに天竜川下流部で採取した2本のコア堆積物の解析結果をとりまとめた.両コアの層相は類似しており,下位から,礫質支持と基質支持の砂礫層の互層,植物片などの有機物を含む砂泥互層,礫質支持の礫層の3つに大きく区分された.これらは各種解析結果にもとづき,それぞれ河川成,海成,河川成堆積物と解釈した.堆積年代はそれぞれ約9600cal yr BP 以前,約9600~7100cal yr BP,約7100cal yr BP以降となり,両コア間でほぼ同時期に堆積したと考えられる.堆積物の累重速度は,11000~8000cal yr BPまでが約12m/kyr, 8000calyr BP以降が約1.5m/kyrで,海水準上昇速度およびその変化に影響されていたと考えられる.また,堆積速度が小さくなる直前の8000cal yr BP前後に,両コアとも堆積物の上方粗粒化がみられ,海進から海退に移り変わったことが示唆された.これらに加えて,今年度はさらに海岸部において掘削長20mのコア堆積物を新たに採取し,前述した2本のコア堆積物との相違を検討した.
|