2007 Fiscal Year Annual Research Report
海洋中層における光合成生物の生存戦略と生元素循環へのその影響
Project/Area Number |
19710009
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
宗林 留美 (福田 留美) Shizuoka University, 理学部, 助教 (00343195)
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Keywords | 物質循環 / 海洋生態系 / トワイリトゾーン / 光合成生物 / 微量金属 |
Research Abstract |
海洋中層以深は、光合成生物にとって生存に必要な光が届かない無光層であると考えられている。本研究では、光合成生物の生物量の指標となるクロロフィルa濃度と、光合成を行う原核生物であるSynechococcus属の細胞数を日本一深い湾である駿河湾において、深度1500mまでで測定した。また、光合成生物に占めるSynechococcus属の寄与が高いことが報告されている亜熱帯海域においても、深度2000mまででクロロフィルa濃度とSynechococcus属の細胞数を測定した。その結果、どちらの海域でも、無光層である20000m以深においてSynechococcus属の細胞とクロロフィルa濃度を検出し、中層以深における光合成生物の分布を世界で初めて明らかにすることができた。Synechococcus属は200m以深において細胞数が深度によらず比較的一定に分布しており、Synechococcus属が無光環境に高い抵抗性を有することが示唆された。1500mまでの水柱全体に対して無光層に存在するSynechococcus属が占める割合は駿河湾で17〜34%、亜熱帯では1%と3%であり、海域間で違いがあることがわかった。また、光合成生物による暗所耐性機構を調べるため、栄養塩や有機物の混入を極力抑えて、海水から必須微量金属を選択的に除去する手法を確立した。その結果、有機炭素と硝酸イオンの混入をそれぞれ5μm1/1と1.5μmo1/1に抑えながら、鉄を0.02nmo1/1、亜鉛を0.002nmo1/1、マンガンを0.004mm1/1、カドミウムを0.0002nmo1/1まで下げることに成功した。さらに、本研究の調査深度に強く影響している北太平洋中層水と、その起源の一つとされているオホーツク海モード水の溶存有機物の濃度分布を求めるとともに、暗条件における生元素循環の主要な担い手であるバクテリアの働きと水温の関係を精査して、本研究に密接に関与していると考えられる環境条件の一部を明らかにした。
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