2008 Fiscal Year Annual Research Report
海洋中層における光合成生物の生存戦略と生元素循環へのその影響
Project/Area Number |
19710009
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
宗林 留美 (福田 留美) Shizuoka University, 理学部, 助教 (00343195)
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Keywords | 物質循環 / 海洋生態系 / トワイライトゾーン / 光合成生物 |
Research Abstract |
海洋中層以深は、光合成生物にとって生存に必要な光が届かない無光層であると考えられている。本研究では、光合成生物の中でも自身の重みでは中層まで沈降できないピコ植物プランクトンに着目し、その細胞数を日本一深い湾である駿河湾において海底直上(深度1500m)まで測定した。また、光合成生物に占めるピコ植物プランクトンの寄与が高いことが報告されている亜熱帯海域においても深度2000mまでで観測を行った。その結果、どちらの海域でも200m以深において真核および原核のピコ植物プランクトンの細胞数が深度によらず比較的一定に分布していることが明らかになり、ピコ植物プランクトンが無光環境に高い抵抗性を有することが示唆された。ピコ植物プランクトンの中でも優占度が高かったSynechococcus属について、水柱全体の現存量に対する無光層の現存量の割合を求めたところ、春の駿河湾で26〜69%と最も高く、夏の駿河湾と亜熱帯で0.7〜10%と最も低かった。この結果から、有光層のSynechococcus属が沈降粒子に付着して中層に輸送されている可能性が示された。また、酵素による細胞消化法により駿河湾におけるSynechococcus属の生細胞数の割合を求めたところ、表層で47%であったのに対して中層では73〜106%と高く、沈降する過程で死細胞を除去するような淘汰が働き、且つ、中層でSynechococcus属が無光環境に適応して生存している可能性が考えられた。駿河湾の海水を培養温度を変えて暗条件で培養したところ、採水深度によらず低温ほどピコ植物プランクトンの生存率が高かった。無光層に輸送された光合成生物の生存戦略として低温による代謝活性の抑制が重要なのかもしれない。
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Research Products
(3 results)