Research Abstract |
SARデータにより氷河の流出速度を求める手法として,SARインターフェロメトリ(lnSAR)を適用することにより,干渉画像から氷河の流速ベクトルが求められてきた。しかし,白瀬氷河のように流動が速い対象では干渉性が悪くなるため,この手法を用いて流速を求められるのは,ERSのタンデムミッションおよびice modeのように回帰日数が1日から3日と極めて近いものに限定される。これは,InSARを適用するgrounding lineの検出についても同様の限定を受ける。 一方,白瀬氷河の2つのSARの振幅画像のペアに画像相関法を適用し,主にクレバスの移動から流速推定の有効性が示されている。このことから,画像相関法を白瀬氷河周辺域が集中的に観測された1996年から1998年の運用停止に至るまで取得されたJERS-1/SARデータに適用して,氷流の流速ベクトルを求め,季節変動と年々変動を明らかにしてきた。さらに,求められた流速ベクトルから,せん断歪みを計算することにより,自瀬氷河のgrounding lineの抽出可能性を調べた。白瀬氷河の中央流線における,せん断歪みを計算した結果,grounding lineにおいて極大となることが分かった。また,最大せん断歪みは,氷流の屈曲が大きくなる領域で大きくなることが分かった。 これまで,氷河のgrounding lineを検出する衛星データを用いた研究は,InSARによる事例のみ存在する。しかし,流動が速い対象では干渉性が悪くなり,現在運用中の衛星を用いるInSARではgrotnding lineの検出は困難である。一方,本研究では振幅画像のペアに画像相関法を適用して求められる流速ベクトルからせん断歪みを計算することにより,白瀬氷河のような流動速度の速い対象についても,grounding lineの検出可能性が高いことが分かった。
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