2009 Fiscal Year Annual Research Report
放射線による細胞膜応答と低線量超放射線感受性の関係
Project/Area Number |
19710054
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
和田 成一 Kitasato University, 獣医学部, 講師 (50370490)
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Keywords | 低線量 / スフィンゴミエリナーゼ / 亜鉛元素 / DNA修復 / バイスタンダー効果 |
Research Abstract |
低線量域の放射線照射をうけた細胞は放射線の刺激により細胞外にシグナル伝達物質を放出し、照射細胞の近傍の非照射細胞にも放射線応答を誘発する現象、つまり、放射線誘発バイスタンダー効果が明らかにされてきた。しかしながら、このバイスタンダー効果の誘導メカニズムについては詳細には明らかにされていない。そこで、バイスタンダー効果の誘導メカニズムを解析したところ、これまでに放射線照射を受けた細胞は放射線の刺激に対して細胞膜応答が起こること、特に、細胞膜応答分子のスフィンゴミエリナーゼが関与すること、この活性化したスフィンゴミエリナーゼは亜鉛元素を要求すること、さらに、スフィンゴミエリナーゼ自身が細胞外に分泌され非照射細胞に放射線応答(細胞死)を誘導することを明らかにした。そこで、本年度は照射細胞から分泌されたスフィンゴミエリナーゼの近傍細胞(バイスタンダー細胞)への作用の解析を行った。 バイスタンダー細胞の細胞致死効果の解析をするため、バイスタンダー細胞に生じる細胞障害物質(NOラジカル、OHラジカル)を調べたところ、バイスタンダー細胞ではNOラジカルの産生が観察された。さらに、バイスタンダー細胞における細胞障害(DNA損傷)を観察したとき、損傷頻度の有意な上昇が観察された。また、これらのラジカル産生やDNA損傷生成はスフィンゴミエリナーゼ阻害剤処置により抑制された。この結果はスフィンゴミエリナーゼがバイスタンダー細胞に作用し、NOラジカルを産生し、このラジカルによってDNA損傷が生成されることを示唆している。さらに、バイスタンダー細胞でのDNA修復分子の分子状態を解析したところ、DNA損傷が顕著に観察されたタイミングでDNA2本鎖切断に関与するATMの不活性化が観察された。これらのことからバイスタンダー細胞ではスフィンゴミエリナーゼの細胞膜への作用によって、DNA損傷が生成され、さらにそのDNA損傷修復機構が一時的に破綻するため、細胞致死効果が誘導されると考えられた。
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Research Products
(5 results)