Research Abstract |
これまでに研究代表者は,炎症性の発癌を誘発させるDNA付加体(キサンチン,イノシン,8-Oxo-Guaなど)の突然変異スペクトルを,「試験管内」と「培養細胞内(DNA付加体を含む環状プラスミドを細胞質内で複製)」で調べ,その双方のスペクトルがほぼ一致することを確かめている。しかし,DNA付加体は様々なタンパク質が相互作用するゲノム内に介在するため,「ゲノム内」のDNA付加体を調べなければ,真の突然変異スペクトルが求められたとは言えない。よって本研究の目的は,DNA付加体をゲノム内に導入するために,まずDNA付加体を1つ含むターゲティングベクターを作製することから始め,「ゲノム内」におけるDNA付加体の突然変異スペクトルを解析できる実験系を確立することである。 初年度は,8-Oxo-Guaをtk遺伝子(エキソン5の35番目のチミン部位)に挿入させた6.1kbpターゲティングベクターを作製することに取り組んだ。8-Oxo-Guaを含む修飾ベクターの作製は,一般的なsite-direct mutagenesis法を用いれば一見容易に思えるが,修飾ベクターをコンピテントセルに入れると,8-Oxo-GuaがDNA修復されて消失するため,その方法は使えない。つまり,DNA付加体を含む長鎖DNAをしかも高純度で作製するには高度な手法が必要となる。本研究は,その手法にもトライし,複数のPCR生成物とライゲーション反応の組合せによる新規の修飾ベクター構築法を確立することによって,8-Oxo-Guaを含む6.lkbpの修飾ベクター(pTK15^<Oxo>)を高純度で合成することに成功した。 最終年度は,その修飾ベクターを,ゲノムの1ケ所に相同組み換えを高頻度に起こさせることが可能なヒトリンパ球細胞(TSCER122株)に導入し,「ゲノム内」における8-Oxo-Guaの突然変異スペクトルを明らかにする。
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