Research Abstract |
鉱山跡地のような斜面の重金属汚染現場の対策には, 侵食による汚染拡散を防止し, 荒廃した土壌生態系を修復する必要がある. そこで, 本研究では植物根圏の水分涵養・地盤安定機能と, リン資材による鉛不溶化効果を組合せた, 新しい汚染修復技術の実用化を目指す. 平成20年度は, 根圏土壌へのリン資材の添加が土壌の鉛をどのような化学形態として析出させるのかについて, X線吸収分光法を用いて同定した. 根の生化学作用をリン-鉛の化学反応の促進に利用し, 緑鉛鉱の生成量を増加することができれば, 土壌中の鉛拡散を抑制とリン資材の添加量の節減に貢献できると考えた. そこで, 異なる科から選んだ植物8種類を用いたポット栽培試験を実施した. 鉛汚染土壌にリン資材(水酸アパタイト)を添加し, 植物を100日間生育させた. そして, 土壌の鉛形態に対する植物根の生化学影響の有無を確認するために, 土壌は根周囲の土壌とそれ以外の非根圏土壌に分けて採取し, 土壌の鉛の化学形態を分析した. 分析の結果, 1)鉛の30-40%がリンと鉛が結合した緑鉛鉱の形態としそ不溶化されていること, 2)緑鉛鉱の生成割合は根圏土壌の方が非根圏土壌よりも高値を示したことが明らかになった. さらに, これまで明確にされていなかった, 資材の添加が土壌の微生物生態系に与える影響について, 土壌の酵素活性を測定することにより資材の生態系インパクトを評価した. 本研究で開発したリン資材は, 土壌の主要酵素であるdehydrogenases, phosphatases, ureaseの活性に対する負の影響はなく, 添加による生態系へのリスクは低いことが明らかになった.
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