2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19710080
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
齊藤 結花 Osaka University, 大学院・工学研究科, 特任講師 (90373307)
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Keywords | ラマン分光 / 偏光 / 表面プラズモン / 近接場分光 / ナノイメージング |
Research Abstract |
ラマン分光は分子振動を検出する計測手法で、基礎科学及び産業分野で広く用いられている。顕微ラマン分光は光の回折限界に迫るミクロン領域の空間分解能で物質の分布情報を得ることができる。さらなる空間分解能改善のために、プローブ顕微鏡と顕微ラマン分光を組み合せた近接場ラマン分光技術が近年開発され、顕微ラマン分光が達成できなかったナノメートル領域の空間分解能を実現できるようになった。これまで空間分解能の改善に注目が集まっていた近接場ラマン分光だが、物質の性質を引き出すための技術開発がおろそかになっていた。本研究では近接場ラマン分光の持つ高い空間分解能に加え、波長分解能測定と組みあわせ、分子配向、偏光、分子間相互作用などの多様な化学的情報を引き出すことを目的とした。通常の顕微イメージングは、特定の波長情報を切り出すことが一般的であったが、本研究ではすべての波長情報を記録しながらイメージングを行なった。波長領域の情報を詳細に引き出すためには、近接場プローブの光共鳴条件をコントロールする必要がある。プローブ材質の屈折率を変化させることで、プローブの光応答(プラズモン共鳴波長)を可視域でコントロールすることに成功した。本研究で開発した技術を用いて、次世代ナノデバイス材料として注目を集めているグラフェンを対象に近接場ラマン分光測定を行ない、エッジにおける化学的な性質の変化、レイヤー内の格子ひずみ、局所的なチャージ量などに関する詳細な情報を得た。本手法はデバイスの小型化に伴って、近い将来強力な分析手法となることが予想される。本研究では波長領域の測定に加えて、分子の対称性に関する情報を十分に引き出すために、新たな偏光測定方法を開発した。特殊な波長板を用いて、xyz3軸完全偏光測定を、顕微鏡下で試料を回転させずに行なうことに成功し、近接場ナノスケール偏光測定への基礎を確立した。
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