Research Abstract |
本研究は,安全色の国際規格と諸外国の規格との規格整合化に寄与するため,日本,中国,韓国の東アジア3カ国4地域における安全色のリスク認知の普遍性と文化的差異について国際比較を行い,東アジアにおける安全色の有効性を検証することを目的としている。平成19年度は,東京在住の日本人学生と北京,南京の中国2都市在住の中国人学生を対象に実施した調査結果の比較検討を行った。東京,北京,南京の3都市で各440名の学生を対象に,JIS Z 9103に規定された安全色8色(赤,オレンジ,黄,緑,青,赤紫,黒,白)の単色ならびに二色配色12パターンを色刺激として用いて,5段階リッカート尺度による安全色の潜在危険度の測定,安全色に対する色彩連想語の収集などを実施した。単色の潜在危険度評定に対する分散分析の結果,東京では,オレンジは黄よりも有意に危険度が低く,北京,南京では,オレンジと黄,赤紫との間に有意差がなかった。また,二色配色の危険度評定に対する分散分析結果から,東京では"オレンジ-黒"の配色は"黄-黒"の配色よりも危険度が低く,北京,南京では両者の評定に有意差がなかった。これより,単色,二色配色いずれの場合でも,従来JISで「危険」を示すオレンジはそれより危険のレベルが低い「注意」を示す黄との間で危険の度合いを明確に区分することが困難であることが明らかになった。また,赤と白の危険度評定に対して日中間で評定に大きな差異が認められた。色彩連想語の集計結果から,中国では赤に対して社会・政治,伝統・文化に関する連想語,白に対して肯定的な意味を内包する連想語と否定的な意味を内包する連想語の両方が顕著に見られた。危険度評定と連想語の出現頻度の関連性について分析を行った結果,中国における赤と白の文化的意味が潜在危険度の評定に影響を及ぼした可能性が示唆された。
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