Research Abstract |
本研究は, 安全色の国際規格と諸外国の規格との規格整合化に寄与するため, 日本, 中国, 韓国の東アジア3カ国4地域における安全色のリスク認知の普遍性と文化的差異について国際比較を行い, 東アジアにおける安全色の有効性を検証することを目的とした。平成20年度は, 東京在住の日本人学生, 北京・南京の中国2都市在住の中国人学生, ソウル在住の韓国人学生各240名, 計960名を対象に実施した調査データの比較検討を行った。JISZ9103に規定された安全色8色(赤, オレンジ, 黄, 緑, 青, 赤紫, 黒, 白)を色刺激として用いた潜在危険度の測定データの分析結果から, 4地域における安全色のリスク認知に幾つかの文化的差異が認められた。赤の危険度は他の安全色と比較して高いレベルにあるが, 北京・南京の赤の危険度は東京・ソウルよりも有意に高かった。また, 東京・ソウルでは白の危険度が最も低いが, 北京・南京では, 赤, 黒に次いで高い危険度を示した。赤紫は地域によって危険度の差が大きかった。これらの結果は, 東アジアの中でも赤や白に対する認識が日本・韓国と中国とで異なる事, 赤紫に対する危険度の認識に共通性が見られない事などが示された。また, オレンジの危険度は, どの地域においても黄よりも危険度が低いか, もしくは黄との間に危険度の差が認められなかった。これより, 東アジア3カ国4地域においては, オレンジと黄との間で危険度を明確に区分できないことから, 黄より高い危険レベルを示す安全色としてオレンジを用いることが不適切である事が明らかになった。更に, 本年度は, 安全色のリスク認知に関する基礎的研究の成果を活用し, 交通場面における安全確保のために色彩の特性を利用した高視認性安全服の試作開発を行った。
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