Research Abstract |
火山噴火に伴い発生する密度流(火砕流や岩屑流など)の水域流入現象は,津波発生のメカニズムや,浅海における火山噴出物の運搬・堆積過程を理解する上で重要である.しかし,密度流の水域流入時の挙動や,津波の規模を支配する物理量は十分に理解されていない.本研究の目的は,水理実験と数値実験をもとにこの現象を整理して支配パラメータを明らかにし,災害軽減に役立つモデルと手法を提案することである. 平成19年度は,主にこの現象を観察・解析するための水理模擬実験装置(長さ2.5mの実験水槽など)の製作・改良を進め,以下のような水理実験を行った.水槽中に二層構造(下層:着色した食塩水,上層:水)をつくり,この二層構造に対してゲートから放たれた密度流を斜面から流入させる.密度流は,5〜15%食塩水にガラスビーズ〜10 vol.%を混入させた粒子混濁流体である.当初は,物理量を様々に変えてパラメータ・スタディを十分に行う予定であったが,ゲートの製作や流体の可視化方法の模索など,予備的な作業に予想以上に時間を要したため,とくに火砕流に相当する低粒子濃度の場合に限定し,流入率・流入角度は一定として実験を行った.その結果,天然での観測事例から推測されるように,流入流体が水槽底面まで潜り込み津波が発生するslide-typeの現象,二層界面の間に貫入しつつ津波を発生させるihtrusion-typeの現象を再現し,これらの結果について波の規模や密度流の時間変化を観察・解析した.数値実験では,これら2種のタイプの現象に対して二層流モデルを用いて表現した.重要となるパラメータとして界面抵抗係数と乱流摩擦係数が挙げられるが,過去の実験との比較からそれぞれ0.08,0.01と推定した.上記水理実験系に対する数値解析はまだ不十分であり,今後これらの係数値が妥当であるかどうかさらに詳しく調べる予定である.
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