Research Abstract |
噴火活動に伴う火砕流や岩屑流(密度流)の海への突流入現象は, 津波の発生過程や火砕物の運搬・堆積過程を理解する上で重要である. 本研究の目的は, この現象に伴う津波の規模や密度流の動きを支配する物理量を明らかにし, 災害軽減に役立つモデルと手法を水理実験や数値実験にもとづき提案することである. 平成20年度は, (1)昨年度から引き続き水理摸擬実験装置の改良と塩水を用いた実験を実施した. また, (2)実験結果と理論にもとづき, 1883年インドネシア・クラカタウ火山噴火における津波発生メカニズム解明のための数値解析を行った. 水理実験では, 密度流をゲートからスロープに放出し, 別の流体に流入させて現象を観察するという手法により, 流体の密度と突入速度が波高に与える影響について調べた. また, 浅水理論を用いた数値計算により同一の現象を解析した結果と, 実験結果が整合的であることを確認した. なおこの研究では, 水よりも軽い密度流が流入するケースについて新たに考案したモデルを用いた. さらに, 数値計算結果について, 理論的に予想される密度比-突入速度-津波波高のエネルギー・バランス式により説明できることを確かめた. つぎに, 水理実験を解析した数値モデルを用いて, 1883年クラカタウ火山噴火で発生した津波の数値解析を行った. この研究では, 噴火前後の地形変化や噴出源の位置, 噴出量を考慮し, また, 従来よりも細かい計算メッシュを用いることにより計算精度を向上させた. その結果, 火砕流の突流入モデルを用いた場合, 沿岸部の津波波高や, バタビア(現ジャカルタ)で観測された津波波形の特徴を従来の研究よりも良好に説明できることがわかった. 最終年度は, 水理実験と理論モデルに関する研究をまとめるとともに, その適用例であるクラカタウ火山噴火の津波の成因に関して議論を深めて論文化を進める予定である.
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