2008 Fiscal Year Annual Research Report
日本海の冬季季節風分布の局地性と東北地方における風の流入・通過ルートに関する研究
Project/Area Number |
19710154
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
島田 照久 Tohoku University, 大学院・理学研究科, 助教 (30374896)
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Keywords | 冬季季節風 / 大気海洋相互作用 / 地形性強風 / 日本海 / 気象災害 / 衛星観測 / 対馬暖流 / 海洋フロント |
Research Abstract |
本研究では、衛星観測と気象シミュレーションデータを総合的に解析し、冬季季節風が日本列島に吹き込む直前に、対馬暖流上で起こる気団変質過程を調べた。顕著事例として、2005年12月25日前後の強風事例に着目した。平成19年度の研究では、主に人工衛星による高解像度観測データを用いて、冬の日本海上では、対馬暖流に伴う高い海面水温域で限定的に、顕著な気団変質が起こることを示唆するに至った。これまでは、衛星観測データや数値シミュレーションの境界条件に用いる海面水温データの解像度が対馬暖流を解像するには不十分であったため、対馬暖流上で限定的に起こる気団変質にはアプローチできていなかった。そこで、平成20年度は、高解像度SSTを境界条件とし、3kmという高空間解像度の日本海の大気シミュレーションデータを用いて、冬の対馬暖流上での海洋-大気相互作用を調べた。ウラジオストック付近から山形県庄内平野沖までの表層風の流線に沿って、温位分布や水蒸気の混合比等の鉛直断面を調べたところ、観測データの結果と一致した。極前線を越えて、暖水に入るところでは、対流混合層の発達は高度1000mに及ぶ程度であった。しかし、対馬暖流域に入ると、高度2000mまでに及ぶ対流混合層の発達が明らかになった。これは、日本海側のウィンドプロファイラーで示された、一様風の分布する高度とも一致する。2005年12月は冷水が山形沖数十kmまで貫入しており、海岸から数十kmのところで日本列島に流入する気流の性質が決定していることになる。また、水蒸気の鉛直分布も対流混合層の発達に対応しており、対馬暖流フロントを境に海面の潜熱フラックスの大きさが顕熱フラックスを越える。これまでにない高解像度データで明らかになった本研究の成果は、冬の日本列島の気象や気象災害のさらなる理解に貢献する。
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