2009 Fiscal Year Annual Research Report
現代における危機の表象と怪物生成のメカニズムについての研究
Project/Area Number |
19710221
|
Research Institution | International Christian University |
Principal Investigator |
生駒 夏美 International Christian University, 教養学部, 上級准教授 (60365525)
|
Keywords | 現代文学研究 / マスコミ / 劇場型社会 / 劇場型犯罪 / テロリズム / パフォーマンス・スタディーズ / インターネット / 和歌山カレー事件 |
Research Abstract |
昨年度に収集した資料の分析を進めながら、関連してパフォーマンス・スタディーズ分野へ領域を広げ、犯罪やテロといった行為が現代社会のどのような特徴によって引き起こされ、それがどのように社会的対応・反応を引き起こすかを分析した。この研究においては、米国ハーバード大学のロビン・バーンスタイン教授の指導を受け、教授の新進の視点に刺激を受け、パフォーマンスや劇場、インターネットなどのメディアが現代社会において持つ重要な意味についての知識・考察を深めた。 12月にハーバード大学において行なった口頭発表では、9・11のテロやオウム真理教が映像というメディアの力を大きく利用して影響力を拡大したことと、現代における犯罪被害者・加害者のメディア露出が視聴者に及ぼす影響について考察し、インターネットの普及によって人々の認識の地平が、いわば浸食された状態にあることと、ある種のパフォーマンスへの過剰反応の関連についてまとめた。パフォーマンス・スタディーズという比較的新しい領域と、文学・カルチュラル・スタディーズなどの領域を横断する研究となり、80年代以降に起こった社会の変化について、聴衆と活発な意見交換を行なうことができた。 この口頭発表をさらに発展させた形で、和歌山カレー事件・秋田児童連続殺害事件などセンセーショナルに世間を騒がせた事件において、ジェンダーとパフォーマンスが現代日本の「劇場型社会」で引き起こした反応について考察した論文を執筆し、国際基督教大学日本研究プログラム発行の『JAPAN STUDIES:THE FRONTIER日本研究のフロンティア』にて発表した。 今年度はさらに、「怪物生成の物語」が、めまぐるしく登場する新しい「語り」の形式の中でどのような機能をはたしているのか、その精神分析的傾向の強い物語化と、怪物化に大きな影響を及ぼすネット掲示板の語りについて、文学全体を見渡した議論を展開するべく、資料の分析・考察を始めた。 これらの分析を通して、現代の犯罪者を巡るナラティブにおいて劇場型犯罪という現代社会特有の状態が深く関係しているという確信を得、最初の「劇場型犯罪」とも言えるゾディアック殺人事件についての資料収集を行なった。いまだインターネットが登場する以前の「劇場」と、インターネット以降の「劇場」の比較を、2010年度中に行なう予定である。
|
Research Products
(2 results)