2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19720040
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
長谷川 千尋 Hokkaido University, 大学院・文学研究科, 准教授 (90431296)
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Keywords | 牡丹花宗碩両吟百韻 / 牡丹花 / 宗碩 / 夢庵 / 池田正盛(性繁) / 道泉 |
Research Abstract |
本研究は、連歌百韻・千句の作品研究の進展のために欠くことのできない古注釈の伝本を調査し、新資料の発掘に努めるとともに、総合的な連歌古注釈史を記述しようとするものである。本年度は、『連歌総目録』の注記をたよりに、『三島千句』(大阪市立大学)、『美濃千句』(天理図書館)、『文明八年一月十一日宗祇独吟百韻』(東京大学)、『水無瀬三吟百韻』(広島大学)、『宗祇独吟住吉法楽百韻』(東京大学)、『湯山三吟百韻』(佐渡大願寺、広島大学)、『宗祇独吟小松原百韻』(東京大学)、『年次未詳宗祇独吟百韻』「天の戸を」(東京大学)、『牡丹花宗碩両吟百韻』(柿衞文庫、東京大学、佐渡大願寺、山岸文庫)の諸伝本の調査にあたった。その結果、東京大学図書館蔵本が新出の古注であることがわかったが、これは、去嫌を中心とした数カ所の簡便な注であったため、研究対象とはしなかった。 本年度の大きな収穫は、『牡丹花宗碩両吟百韻』の第三種注に位置づけられる、佐渡大願寺所蔵の古注の発見である。本百韻には、作者牡丹花の自注(第一種注)が備わるが、自注は、施注句が二十九句のみで、うち十九句が牡丹花の句という偏りがあって、百韻の解読を助ける資料としては不十分であった。そのため、全句を対象とした詳注である第二種注と第三種注の存在意義は大きい。特に新出の第三種注は、これまで知られていなかった百韻の興行目的や当座の出句事情に言及するところがあって貴重である。本年度の成果をまとめた論文では、第三種注が指摘する、「摂津池田」氏が、牡丹花の草庵、夢庵を「新造」したという事柄の妥当性を論じ、牡丹花の有力な庇護者であった池田氏の性繁の没年を考証した上で、永正九、十年の新造の後援者としては正棟が考えられることを指摘した。また、新造を祝するに相応しい明るい発句で始まった本百韻の中には、性繁、道泉という旧友を失った、牡丹花の孤独な心境を投影した句も見られることなどについて述べた。
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Research Products
(1 results)