2009 Fiscal Year Annual Research Report
近代ドイツ言語論における詩の位置―ヘルダーリンを中心に
Project/Area Number |
19720061
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Research Institution | University of the Sacred Heart |
Principal Investigator |
畠山 寛 University of the Sacred Heart, 文学部, 講師 (30401160)
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Keywords | ヘルダーリン / ドイツ文学 / 詩 / ティーターン神族 |
Research Abstract |
今年度は平成20年度に引き続き、『エムペドクレス』における悲劇の構造について研究を進めた。だが作品を詳細に分析している過程で、この悲劇でヘルダーリンが表そうとしている「自然」と「人為」の「調和的対立」が、悲劇形式がもつ言語表現のありかたでは表現できない、換言すれば悲劇形式がヘルダーリンの詩的言語を許容していないのではないかと考えるにいたり、当研究の方向を若干修正することになった。そこで着目したのが、後期の断片の一つ『ティーターン神族』である。 後期ヘルダーリンは、行間だけではなく、紙の左右の余白まで使って推敲に推敲を重ねていくことはよく知られている。この断片にもまた、ペルダーリンのそのような書きぶりが表れている。実際にどのようにヘルダーリンが言葉を書き足しているのかを見ることは、後期のヘルダーリンの詩を分析するために非常に意義のあることから、ヘルダーリンの手稿のほとんどが集められているシュトゥットガルトのヘルダーリン・アーカイブに行き、この断片の手稿を入念に調査してきた。現在、そこで調べられたことを論文にまとめているところである。 この断片の下敷きとして、ヘルダーリンの歴史観の根幹にある神々の闘争、ティーターノマキアーがあり、それが現在の視点から捉えられている。現在取り組んでいる論文で、後期ヘルダーリンにおいて、言葉の使い方がいかに詩のテーマであるティーターン神族と結びついているか、また、ティーターン神族がヘルダーリンの歴史観を形成する大きな位置を与えられているかを解明できるものと思われる。
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