2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19720068
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
武田 将明 Hosei University, 文学部, 講師 (10434177)
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Keywords | 英国十八世紀 / 現代文学・批評 / 小説の原型 / 夏目漱石 / ロビンソン・クルーソー / イライザ・ヘイウッド / 小説史 / 文学の感情表現 |
Research Abstract |
2008年度には、英国18世紀小説が今日の文学状況に対して持ちうる意味を様々な見地から考察するとともに、本研究の主たる目的である小説史の問題を再考する論考も執筆した。 「囲われない批評」、「タナトスからの脱出」は、主な議論の対象は現代日本文学・批評であるが、前者においてはドライデン以降の英国批評史に言及しつつ文学・批評の現代における役割を再考し、後者においてはRobinson Crusoeを近代小説の原型として取り上げつつ、現代文学における公共的なものと私的なものとの確執の描かれ方の特徴を論じた。このことで、英国18世紀小説とその歴史を再検討することが、今日の文学の参考になることを実践的に示そうとした。なお、前者は第51回群像新人文学賞(評論部門)を受賞した。英国文学と現代文学・批評とを結び付ける試みは「シミュラークルと変容の詩学」でも行った。 「仮構される内発性と近代文学」では、夏目漱石の18世紀英国文学史講義録である『文学評論』を批判的に読むことで、英国小説史を再構成する意義と方法を示そうとした。すでに完成し、2009年度に刊行予定の論文「Eliza Haywoodの翻訳一模倣と創造」では、18世紀のベストセラー作家Haywoodによる翻訳をフランス語の原文と比較しつつ、翻訳には18世紀英国特有といえる感情表現が発生していることを具体的に指摘し、英国小説史を英国文学だけで考察することがいかに不十分であるかを示した。 口頭発表はHaywood論のもととなったものを含め3回行い、また、業績欄に掲載しなかったが書評を6本執筆、共訳で『18世紀研究者の仕事-知的自伝』(S・カルプ編、中川久定・増田真監訳、法政大学出版局、2008年)を刊行した。今年度も科学研究費助成金によって有意義な研究のできたことを感謝したい。
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Research Products
(10 results)