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2008 Fiscal Year Annual Research Report

第一次大戦期の英国におけるナショナリズムの形成と作家による教育テキストとの関係

Research Project

Project/Area Number 19720073
Research InstitutionKumamoto Health Science University

Principal Investigator

岩井 学  Kumamoto Health Science University, 保健科学部, 准教授 (70369859)

Keywords第一次世界大戦 / D・H・ロレンス / Movements in European History / 歴史教科書 / 愛国ナショナリズム / 反独イデオロギー
Research Abstract

第一次大戦前の社会進化論、優生学、人種退化論により形成された国家観、および大戦中から戦後にかけての国家のあり方をめぐる議論を踏まえたうえで、国民国家のアイデンティティおよびナショナリズムのイデオロギー形成と、D・H・ロレンスの教育用テキストとはどのような関係にあったのかについて研究した。
ロレンスの歴史教科書物Movements in European Historyにおけるドイツ表象を分析した。焦点を当てたのは、ロレンスによるゲルマン民族およびフン族の描写、そしてロレンスの近代ドイツ観である。これらを通して、『ヨーロッパ史のうねり』と国家イデオロギーとの微妙な関係が明らかになる。反独イデオロギーのもとゲルマン民族の過小評価がなされていた時代にあって、『ヨーロッパ史』でのゲルマン民族は、ヨーロッパ文明の誕生にとって欠くことのできない存在として描かれており、親独的ともとれる身振りである。
しかしその一方でフン族の描写には、当時の人々の間に流布していたイメージの連鎖、すなわちドイツ人=フン族/野蛮/アジア/退化/小動物といった反独的な枠組みがそのまま採用されている。
近代ドイツを扱った「ドイツ統一」の章では逆に、ビスマルク以降のプロシア的軍事国家を嫌悪する当時の反独感情と真っ向から対立する世界観が提示されている。物質主義が蔓延し、破壊衝動の萎えてしまった近代ヨーロッパを再生させる契機として、ビスマルクによる軍事的強権体制が描かれる。しかしここにも、当時のイギリスの中産階級の間で広く流布していたイデオロギー、すなわちイギリスにおける人種退化論や優生学をめぐる共通の問題認識が浮き出ている。ドイツをめぐる『ヨーロッパ史のうねり』の中の記述には、ロレンス独自のドイツ観と、当時のプロパガンダによって流布された反独イデオロギーが分かち難く絡み合っているのである。

  • Research Products

    (2 results)

All 2009 2008

All Presentation (1 results) Book (1 results)

  • [Presentation] 書簡は石炭となるかダイヤモンドとなるか--ロレンス研究に書簡を利用する際の危険性と可能性2008

    • Author(s)
      岩井学
    • Organizer
      日本ロレンス協会第39回大会
    • Place of Presentation
      松山大学
    • Year and Date
      2008-06-21
  • [Book] D・H・ロレンス研究(仮題)2009

    • Author(s)
      岩井学、浅井雅志, 他
    • Publisher
      朝日出版社(未定)

URL: 

Published: 2010-06-11   Modified: 2016-04-21  

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