2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19720081
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Research Institution | Kokushikan University |
Principal Investigator |
神谷 まり子 Kokushikan University, 政経学部, 講師 (90407198)
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Keywords | 民初通俗文学 / 鴛鴦蝴蝶派 / 新聞小説 / 上海文学 / ジャーナリズム / ニュース / 文明論 / 上海都市文化 |
Research Abstract |
民国初期において流行した社会小説と黒幕小説は、ともに都会で起こる事件や犯罪に注目したもので、いずれも「いつ」「だれが」「どこで」など事件報道としての事実性というよりも、話が面白いかどうかによって消費された点で共通する。特に上海の新聞メディアを舞台に流行し、都市をにぎわすスキャンダルや犯罪を主な内容としたという点で、社会小説と黒幕小説は互いに影響を与えながらこの時期に発展した。警夢痴仙(孫玉声)『海上繁華夢』シリーズ(1903年)や海上説夢人『歇浦潮』(1921年)などの代表的な社会小説を見ると、人物像の特徴の一つとして女性たちの描かれ方があり、客の金を騙し取ることしか興味のない妓女、自由奔放で性的に放逸な女学生、夫の目を盗んで俳優との情事に明け暮れる妾たちなど、多くの場合は性に対して積極的で、男性を欺き、優位に立つ人物として登場する。このような女性像は伝統中国の女性規範の対極に位置し、また徐枕亜著『玉梨魂』(1914年)を代表とする言情小説に描かれるような、愛する男性を想いひたすら自己犠牲を続ける女性たちとも全く異なっていた。これらは悪徳を象徴する様々な事象を風刺して描くというジャンルの性質から必然的に生まれたものだと考えられるが、それは女性をめぐる詐欺事件や殺人犯罪、各種スキャンダルを描いた黒幕小説の人物像と多くの共通点を持っている。今年度は黒幕小説の代表作である路濱生編『(絵図)中国黒幕大観』(中華図書集成公司、1918年)のなかの女性たちにまつわる部分を取り上げることで、近代活字メディアが生み出した民初の女性像について検討した。
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Research Products
(3 results)