2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19720090
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
横田 賢司 Nihon University, 生産工学部, 助教 (30375216)
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Keywords | 数量詞遊離 / 意味論 / 語用論 / 音韻論 |
Research Abstract |
1. 前年度に引き続き、日本語において主語名詞句から数量詞(numeral quantifier)による遊離が可能な場合、名詞句と動詞句、およびそれらを含む文はどのような構造的、意味的、語用論的特徴を有するか、そして日本語話者はその構文をどのようなメカニズムで解釈しているのかについて考察した。 2. 考察の結果、以下のことが明らかになった。(1) 数量詞遊離文にみられる名詞句の部分.非部分の解釈と分配・非分配の解釈の(原理的)可能性を考慮すると、日本語の遊離数量詞は名詞句に関連付けられて解釈される場合(NP数量詞)と動詞句に関連付けられて解釈される場合(VP数量詞)との2種類が存在することになる。(2)(1)で触れた2通り解釈の可能性が存在することは、コンテクストを考慮した実際の発話場面におけるそれぞれの韻律的特徴からも支持される。(3)聴解理解実験により、話者(または読者)は文構造から導かれる潜在的な韻律(Kitagawa and Fodor2006など)に適う意味解釈(VP数量詞かNP数量詞)を選択し、ひいては文の適格性を決定していることがわかった。(4) 本研究では、漸進的(incremental)解釈のための統語論ならびに意味論を方法論的に特徴付けたが、数量詞の遊離現象を観察し、自然言語の意味解釈の標準的な原理である構成性原理に基づいて定式化され、文を左から右へ語単位で順次解釈するという漸進的な意味解釈の過程を反映する文法理論(例、動的統語論)にうまく応用できることを示した。 3. 計2年間に渡る本研究は、日本語談話における情報が構文解釈に及ぼす影響を多角的に研究したものである。実際の発話中では当該の構文がどのように用いられ、特徴付けられるかということについてあまり考察してこなかった従来の研究を修正し、これに代わり得る理論として、形式と情報構造(イントネーションを含む)の相互関係に焦点をあてた記述的.理論的アプローチを試みた。
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