2009 Fiscal Year Annual Research Report
日英語における意味・形式・音韻に関するミスマッチ現象について
Project/Area Number |
19720112
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岩崎 真哉 Osaka University, 大学院・文学研究科, 招聘研究員 (90379214)
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Keywords | 副詞的名詞 / 認知文法 / 構文文法 / 時間メタファー / 主体性 |
Research Abstract |
本年度は、時間副詞と複合語の研究に焦点を当て分析を行った。特に、時間のメタファーを取り上げ、Moore(2006)の分析を日本語の時間表現のデータから再評価した。具体的には、時間メタファーを主体的・客体的把握と直示的・非直示的な観点で分類を行った。そうすることにより、日英語に見られる時間メタファーを統一的に説明することが可能となることを示した。この研究は、われわれの時間概念形成のメカニズムの解明には重要な研究であると言える。時間メタファーが関わらない副詞的名詞類については、それが自由関係と関連し、「自由関係節は非顕在的な前置詞をその構造にもつ」と提案した先行研究を検討した。その研究は果たして妥当であるか、データを実証的に説明することができるか分析した。また、本質的に、なぜ自由関係節(副詞的名詞類にも当てはまる)が、「場所」・「時間」・「様態・方向」に限られるのか、という問題の研究を行った。本研究ではそれには特定の構文が関与していると主張した。この研究はこれまで疑問とされてきた間題に一つの解決策を与えたという点で意味がある。 時間副詞のスコープの研究は、先行研究の問題点を指摘し、構文文法の枠組みで取り組んだ方が事象に対する説明力があることを示した。さらに、通時的な観点・類型論的な観点から分析し、本研究の論の精緻化を行った。複合語の研究も含めて、以上行った分析が、我々のどのような認知システムを反映しているのか、ミスマッチという概念の基に包括した。本研究は、先行研究の問題点を解決し、新たな現象も説明することが可能である提案を行ったという意味で、価値のある研究である。
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