Research Abstract |
本研究では,古代東アジア(9〜12世紀前後)において盛んに製作され,各国間で意匠等に影響を与え合った銅鏡に焦点を当て,(1)研究の基礎となる出土資料集成の構築,(2)日本、韓国、中国で比較可能な銅鏡編年の構築,(3)汎東アジア的視点による各国銅鏡の様相の把握,を目指している。さらに,これらを踏まえた上で,その背景にある各国間の文化受容の一側面を解明することを目的としている。 平成19年度は,基礎となる(1)に重点を置き,日本の発掘調査報告書全体の3割ほど,韓国の発掘調査報告書全体の6割ほどを通覧し,日本出土鏡を約100点,韓国出土鏡を約70点を収集・カード化した。これまでに内外の研究者によって出土銅鏡の集成はおこなわれておらず,このような方法をとることで時間はかかるが,資料の網羅的収集が可能になる。現在までに,韓国出土の高麗時代鏡には日本・宋・金・元系の鏡が圧倒的多数を占め,韓半島独自の文様を持つ鏡はごくわずかであるという見通しが立っている。今後は,これら韓半島で出土する鏡が,各国の具体的にいつの時期のもので,どのようにもたらされたのかという視点を含んだ論文を公表する予定である。 また,日本では,韓国・中国と異なり,墳墓からの鏡の出土数が少なく,かつ,明確な遺構に伴って出土することも少ない。そのため,日本での鏡の使用状況をより具体的に把握するべく,平安時代の文献史料(日記,資財帳,平安遺文等)にみられる鏡関連記事を収集した。 成果の一部については平成19年11月,大韓民国国立慶州文化財研究所において口頭発表をおこなった。
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