2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19730038
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
喜多 康夫 Teikyo University, 法学部, 講師 (80307206)
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Keywords | 国際法 / 国際司法裁判所 / 国際訴訟 / 英国政府 |
Research Abstract |
平成19年度においては、資料収集と整理ならびにその読解に勤しんだ。まず、4月から8月まではICJIPleadingsの整理と読解のほか、二次文献の収集を行った。そして8月下旬から9月上旬にかけてはイギリスに渡って、資料収集を行った。主として、ロンドンのキューにあるNational Archivesで公文書を読みつつ、重要な書類をデジタルカメラに収めた。 公文書から読み取れたのは、コルフ海峡事件は、実はイギリス政府にとってはリスクの多い訴訟だったということである。第一に、コルフ海峡事件は冷戦構造の枠組の中でイギリスとアルバニアの外交関係の破綻で生じた事件であることから、その訴訟戦略はイギリス政府の東欧政策に重大な影響を与えるものであった。第二に、にもかかわらず、触雷事件が生じたイギリス海軍の通航が、じつはアルバニアの反応をみるための航海訓練であって、法務総裁であったショークロスなど当時の政府法務官たちが無害通航ではないと判断するものであった。そのようなリスクの高い訴訟であったにもかかわらず、イギリス政府が満足できる判決を得たことが、1950年代のイギリス政府の国際訴訟政策全体に重大な影響を与えたことが分かった。そのため、貨幣用金事件を含むコルフ海峡紛争だけでなく、漁業事件やアングロ・イラニアン石油会社といった1950年代までの訴訟事件におけるイギリス政府の国際訴訟戦略と戦術を分析する必要性を感じるようになった。 来年度以後は次の二つの作業を行う予定である。第一に、コルフ海峡紛争での英国政府の訴訟戦略と戦術に関する研究をまとめたい。第二に、コルフ海峡事件以外の1950年代のイギリス政府の関与した国際訴訟の資料収集と整理も行いたいと考えている。
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