2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19730051
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
深町 晋也 Hokkaido University, 大学院・法学研究科, 准教授 (00335572)
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Keywords | 刑事法学 / 積極的一般予防論 / 非犯罪化 / 刑罰論 / 法益論 |
Research Abstract |
本年度は、刑罰による規範形成を巡ってなされている欧米の議論を検討対象とし、とりわけ積極的一般予防論に対する研究を進めた。その結果、積極的一般予防論の前提となる「規範」それ自体について、解決を要すべき問題があることが判明した。即ち、ここで問題となる規範とは、そもそも我々において既に受容されている規範に限定されるのか、それとも従来は必ずしも受容されていない新たな規範をも含むのかという点である。 従来我々が(暗黙にしろ)受容してきた規範のみが、刑罰によって確証されるべき規範であるとすることは、刑罰による規範形成に対して一定の枠組みを提供する点で考慮に値する。しかし、新たな立法を行う際には、必ずしもこのような理解は明確な指針を提供しないのみならず、そもそも我々に受容されてきた規範のみが刑罰による確証に値すると解する理論的根拠自体が十分に示されていないことが明らかとなった。 かかる理解を前提に、刑罰は積極的に新たな規範を形成することができるとする場合に問題となるのは、形成可能な規範の限界である。積極的一般予防論においては、刑法の目的を法益保護とすることに批判が向けられているが、むしろ法益論こそがかかる限界を設定する機能を有すべきものである。法益論のかかる機能は従来余り意識されてこなかったものの、規範論と法益論との接合こそが目指されるべきである。したがって、次年度は、かかる基本的視座を具体的な刑事立法の検討において展開する予定である。
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