2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19730065
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Research Institution | Komazawa University |
Principal Investigator |
中田 英幸 Komazawa University, 駒澤大学・法学部, 講師 (40436069)
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Keywords | 信託 / 債務整理 |
Research Abstract |
1999年のドイツ倒産法改正によって、同法292条以下に信託を用いた債務免除手続きが設けられた。これは、未だ紹介されておらず新規性がある。それとともに、大陸法において信託の活用があることを示すものであり、同じく大陸法に属するわが国でも参考になる。しかも、同法292条は専ら委託者に対する受託者の義務を定めるものであり、それ以外の法的関係については規定がない。それゆえ、その制度は倒産法を基盤とするだけではなく、民法によって規律されており、私法制度の根本と関係する。最後の点については、ドイツの学説においてもかなりの対立があり、今後の研究の発展が予想される。 英米法に関しては、弁護士の預り金を委任(agency)として扱う傾向があり、信託として扱うわが国とは相違している。もっとも、信託も委任も信認関係を基礎としている点は共通である。信託と委任との区別は、権原(title)であるが、救済の側面では信認関係が重視され、信託であること(権原が移転していること)は重視されていない。 大陸法系に属するわが国とドイツにおいて債務整理に信託を用いることが意識され、逆に信託が発達しているはずの英米法においては委任によって処理されている。それゆえ、わが国において信託の利用を探るには、英米法よりもドイツ法、特に新しい倒産法の規定を巡る議論を参照することが重要である。
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