2009 Fiscal Year Annual Research Report
保険契約法の立法と保険募集-私法における情報提供規制の位置づけとその役割
Project/Area Number |
19730069
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
小林 道生 Shizuoka University, 大学院・法務研究科, 准教授 (60334950)
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Keywords | 告知義務 / 保険媒介者 / 告知妨害 / 不告知教唆 / 保険法 / 保険募集 / 立法 |
Research Abstract |
保険法の制定にあたっては保険契約者保護の進展を意図して従前の商法における告知義務に関わる規定の見直しが行われたが、その主要な改正点のひとつとして、保険契約者、被保険者に告知義務違反があっても保険媒介者による告知妨害や不告知教唆があった場合には、原則、保険者は保険契約の解除ができないことが新たに規定されることとなった。 これまで学説では、生命保険募集人等、保険者から告知受領権限を付与されていない者について、告知妨害、不告知教唆をはじめ保険契約者等の告知義務履行に際して不適切な取り扱いがあっても、そのような事情を斜酌せず保険者の解除を認めてしまうことには問題があるとの認識が共有され、また、判例も個別事案の妥当な帰結を導きうるよう努力してきた経緯があった。このような状況を前提にすれば、保険法立法を契機として上記規定が新設されたことは、たしかに保険契約者保護を進展させたことになる。もっとも、それは同時に解釈論的課題として、これまでの議論に比してどの程度保険契約者保護が進展したのか、従前の議論はこれからどうなるのかを明らかにすべきであるとの要請も生じさせた。 そこで、平成21年度実施の研究として、「保険媒介者の告知妨害・不告知教唆と保険法」民事法情報281号18頁以下において、保険法における解除権阻却事由としての告知妨害、不告知教唆の意義につき検討し、従来の学説、判例との保険契約者保護の水準の比較を通じて保険法立法によってそれらが今後どのような影響を受けるのか、すなわち、保険法の新設規定が従来の学説、判例の保険契約者保護の水準にまで到達したとしてそれらは保険法立法までの過渡期の議論としての意義を有し役割を終えることになるのか、あるいは、保険法制定後もなお保険契約者保護の機能を保持するのか、について考察した。
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Research Products
(2 results)