2008 Fiscal Year Annual Research Report
少数株主の法的地位-株式買取請求権を手がかりとして
Project/Area Number |
19730070
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
齊藤 真紀 Kyoto University, 大学院・法学研究科, 准教授 (60324597)
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Keywords | 民事法学 / 会社法 / 企業結合 / 子会社 / 少数株主 / 株式買取請求権 / EU / ドイツ |
Research Abstract |
英米法圏については、先行研究が蓄積しつつあるので、平成20年度は、当初の予定を変更し、収集した文献の研究を通じて、これまでの調査において蓄積が少なかったフランスにおける少数株主保護の全体像を把握することに重点をおいて活動をした。フランスにおいては、隣国のドイツとは異なり、体系的な企業結合規制が存在せず、子会社の少数株主保護は独立した会社の少数株主保護規整の延長線上にある。少数株主の保護に資する制度的な手当は、複数存在するが(例えば、情報請求権をはじめとする各種の少数株主権、株主による取締役の責任追及可能性、多数決濫用の法理等)、我が国との比較において、注目に値するのは、利益相反取引規制において、取締役と会社の利害が衝突する取引のみならず、大株主と会社の利害が衝突する取引も対象とされている点である。このほかに、企業グループの利益を一定の要件の下で個々の会社の利益より優先させることを認める判例法理もあり、会社の運営において、少数株主と会社、さらに会社が属する企業グループの利害調整をはかるメカニズムが存在する。フランスにおいては、少数株主の収益への期待に対して会社運営上一定の保護が与えられているといえるが、会社からの離脱を望む少数株主に一般的に株式買取請求権を付与する制度は見当たらない。上場会社の株主についてのみ、会社の基礎的変更に該当する状況において、株式買取請求権が与えられる制度が、証券取引規制にあるにすぎない。このような株式買取請求権の位置づけの理解につき、同じ大陸法のドイツの規制と対照させながら、より調査が必要であることが確認された。
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Research Products
(3 results)