2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19730076
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
堤 健智 Tokyo Metropolitan University, 社会科学研究科, 准教授 (20361454)
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Keywords | 団体 / 法人 / 非営利 / 不法行為 |
Research Abstract |
非営利団体やその関係者が負う諸々の損害賠償責任についてあるべき姿を検討する前提として、本年度においては、既に議論等の蓄積がある営利法人を対象に、判例・学説等の分析を行った。その結果、論文の前提を大きく揺るがすような新しい発見があったわけではないものの、議論の前提を整備するという意味では一定の成果が上がったように思われる。 一方、外国法や外国学説の分析については必ずしも十分な時間を割くことはできなかった。しかしながら、英国において"The Charitable Act2006"が制定法となり、その中で非営利団体や団体関係者が不法行為によって負う損害賠償責任の制限に関する規定が盛り込まれたことを明らかにできたことは、本研究にとって少なからぬ意味を持つものであった。元々、この種の責任制限はアメリカのある時期における一部の州の裁判所が英国判例を誤解したことにより生まれたものであるという経緯があり、他国においてはほとんど例を見なかった(隣国のカナダにおいてすら、同様の免責は認められていない)。そのような、非常にユニークな制度と思われていた"charitable immunity"について、同様の考え方が他国でも認められつつあることは、今後の日本法への影響などを検討する上できわめて注目すべき事態である。しかしながら、なぜこのような他国への波及が起きたのか、そしてそのことは妥当であったのかなどといった点については、時間や資料の制約により、ほとんど明らかにすることができず、今後の課題として残されている。
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