2007 Fiscal Year Annual Research Report
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19730094
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Research Institution | Hokkai-Gakuen University |
Principal Investigator |
千葉 華月 Hokkai-Gakuen University, 法学部, 准教授 (90448829)
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Keywords | 医療事故 / 医療過誤 / 損害賠償 / 補償 / 医師の過矢 / 北欧 / スウェーデン / デンマーク |
Research Abstract |
本研究では、北欧における医療事故に関する補償制度の検討により、医療事故における被害者をどのように救済するべきかについて考察する。現在、わが国では、出産に伴う医療事故の被害者を救済するために、医療事故における無過失補償制度導入のための準備が進められている。このような医療事故において医療者の過失を問わない補償制度は、スウェーデンにおいて初めて導入され、その後、北欧各国で導入され、法制化されている。 今年度は、医療事故に関する補償制度について、文献に基づく研究だけではなく、スウェーデン、フィンランド、ノルウェーを訪問し、関係機関において調査を行った。同調査により、上述3ヵ国の制度の全体像と実態を把握することができた。 上述3ヵ国の中で、今年度は、特に、スウェーデンの医療事故に関する補償制度について検討し、その研究成果を論文として公表した。主に、同制度の歴史、患者傷害法の立法過程の議論、同法の内容などについて明らかにすることにより、以下のような知見を得た。 スウェーデンの制度では、医療事故において、医療者の過失の有無は問われず、保険会社は、損害が実際に避けられたか否かという基準に基づき、給付要件の有無や補償額を判定する。被害者等が決定に不服がある場合には、被害者等は、患者傷害審査会に申立てることができ、さらに不服がある場合には、行政裁判所に申し立てることができる。スウェーデンでは、同制度の導入により、より多くの被害者を迅速に救済できるようになり、問題はほとんど生じていないようである。このような医療者の過失を問題にしない制度については、しばしば、医療者の責任が不明確になるのではないか、医療事故発生の抑止にも問題が生じるのではないかと指摘される。しかし、スウェーデンでは、このような問題は生じていない。医療事故における被害者の救済制度と医療者の懲戒・苦情申立て制度が分かれているからである。
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Research Products
(1 results)